Painuの事業紹介シリーズ①「生産」
石垣島産パイナップルを世界へ現状を改革し、次世代につながる農業を
聞き手・文:㈱Painu 広報 杉町彩紗
今回から、弊社の取り組みについてご紹介するシリーズをお届けいたします。第一回となる今回は原料となるパイナップルの「生産」にフォーカス。
話しますのは、㈱Painu 代表取締役社長 宮城良純です。
杉町彩紗(以下、杉町)
宮城社長がPainuを始めたきっかけをお聞かせください。
石垣島パイナップルは何度も食べていましたが、2020年に改めて口にした時に本当に美味しいなと。すごくシンプルですが、ここが原点です。
宮城良純(以下、宮城)
杉町
本当にシンプルですね。
ただ美味しいだけではありません。石垣島産パイナップルは、世界的に見てもかなり特殊な品種です。特に当社が扱う「ピーチパイン」は、沖縄の限られた地域でしか作れないもの。つまり、日本にしかない味です。これは世界に出せる、むしろ、これで勝負するべきだと思いました。この希少性と唯一無二の味、バックグラウンドのストーリー性、国産という価値。これらが揃う農産物はそうありません。
宮城
ピーチパイナップルは桃の風味が香る品種。世界の中でも沖縄でしか採れない。
ですが、僕にはもうひとつの動機があります。それは「違和感」です。
近年の農家の高齢化やそれに伴う人手不足はご存知のとおりと思います。では、若者はなぜ農業に携わろうとしないのでしょうか。それは産業構造に問題を抱え、高負荷・低賃金となってしまっているためです。やりがいがあるだけでは仕事は続けられません。今のままでは未来はないと気付き、Painuの事業を通してその構造改革をしたいと考えました。
この現状に至る、要因となるものはあるのでしょうか。
ひとつは販売までの構造にあると言えます。石垣島のパイナップル農家のうち、⅗がJAの部会に所属しています。つまり半分以上の農家さんが、販売先や価格、流通、出荷ルールといった部分をJAに依存している構造になっています。さらに県や行政の技術指導も、リソースの関係から基本的にはJAに任せるスタンスのため、販売から技術指導、価格決定に至るまで、JA中心の仕組みに依存せざるをえない産業構造になっています。もちろんJAがこれまで果たしてきた役割は大きく、否定することはできません。しかし、現場を知れば知るほど違和感は強まりました。「この構造のままで、この産業が残ることはできるのか? 」。頑張っても収入が大きく変わらないような産業に、若い人が入りたいと思うわけがありません。この「生産者が報われない現実」を強く意識するようになりました。この問題が石垣島のパイナップルの存続の危機につながることは間違いありません。
こうしてPainuが萌芽したのですね。その後、農家の方々と協力して商品が開発されていきました。
2023年5月から8月まで、すでに構えていた店舗「Painu Taco」にてテスト販売を行い、どのお客様からも「美味しい」とご好評いただきました。店舗というリアルな場での反応は、市場がすでに「答えを持っている」ことを示していました。ここでの手応えから本格的に事業化フェーズへと移行することになったのです。
23年9月に㈱Painuを設立、現在まで事業を展開してきました。石垣島に構える店舗やフードトラックでのパイナップルスムージー販売のほか、全国各地の百貨店で開催される催事への積極的な出店や卸売販売など、島の外に向けた事業展開も軸として携えています。まずは認知されなければ話は始まりませんから。
島の外というと、日本だけでなく海外でも事業展開が進行中です。
アメリカと台湾、二つの国での事業展開を見据え、今まさに動いている最中です。
先に動いていたのはアメリカです。ここではいわゆる市場検証を行っている段階になります。LAの大学のMBAネットワークの中で試食会を開催、アンケートやヒアリングを行いました。正直、海外でどこまで通用するのかは半信半疑でした。しかし結果は想像以上。
「外国(日本以外の国)で作られたものとは甘さが全然違う」
「こんなパイナップルは初めて食べた」
「冷凍・解凍後なのに切り立てのパイナップルと同じ美味しさが保たれている」
なにより嬉しいのが、ここで人気だったのがピーチパイナップルだったことです。先述したとおり、ピーチパイナップルは日本、沖縄にしかない品種です。だからこそこの品種で世界に進出したいという強い思いがありました。
また、この事業において着目したいのがその動き方です。現地メンバーは学生ですが、その思考法・動き方はまさしく事業家です。本人たちだけでなく、周囲の団体や有識者を自然と巻き込み、プロジェクトが形成されつつあります。彼らのおかげもあり、市場側の情報がものすごいスピードで集まり始めています。
このプロジェクトはいわば、「Painuが世界市場で成立するか」を見る実験です。こういったことは通常、専門の市場調査会社に依頼するものですが、自社内で行うことで忌憚なき調査結果を得られます。そしてその結果を見て、改めて「なぜこんなに美味しいものが評価されていないんだろう」というPainuの原点となるこの疑問に立ち返り、そしてこの事業を推進させなければと決意が強くなりました。
今後は大学内だけでなく、ファーマーズマーケット、飲食・小売業者と調査範囲を広げていきながら本格的なスキーム構築に乗り出していく所存です。
また同様に、台湾でも市場検証を行っている段階です。今年1月、パイナップルの産地である台湾・台東県を訪れました。ここでは台農17号と呼ばれるブランドパイナップルが栽培されており、日本よりもオーガニックな環境で育てられています。日本に輸入されるパイナップルの中でフィリピン産に次いで2番目のシェアを持つ台湾の技術について学ぶと同時に、石垣島産パイナップルとの違いを知ることができました。
これらを経て「石垣島 × 日本ブランド」で十分戦えるという確信が強まりました。
他のブランドを知ったことで石垣島産パイナップルの価値を改めて知ることになったのですね。次にお尋ねしたいのは生産の現場における改革です。
Painuにとって「生産」は、 単にパイナップルを作ることではありません。それは「島の未来を作る仕事」だと思っています。
石垣島のパイナップルは昔、日本中に流通していました。しかし時代が進むにつれ、輸入品が多く出回るようになったことから流通量を大きく減らしました。それに伴い農家は減り、畑もどんどん減っていったのです。そのため僕がこの事業を始めた頃、島ではよくこう言われていました。
「パイナップルはもう儲からない」
「若い人はやらない作物だよ」
しかし現状そうであっても、この価値をもつ石垣島産パイナップルの存在を諦めるべきではない、この状況を変えなければならないと思いました。そのためには農家の皆さんと力を合わせることが必要不可欠です。そのなかで僕たちの役割は「農家さんが安心して作れる環境を作ること」であり、販路の開拓や価格設定の見直しを含めたブランディング、安定的な買取など、当社が考える「生産」のかたちを推進しています。多くの人は「生産=農家さんの仕事」と考えられるでしょう。しかし、僕の考えは少し違います。生産とは、畑そのものから収穫、選別、加工、冷凍、販売、発信の全てが繋がって初めて言えるものだと思っています。事業構想段階からこの意識を強く持っており、構造改革のためのスキームを徐々に具体化してきました。そのために、工場の設置や大阪での旗艦店オープン、台湾やアメリカといった海外市場への進出、国内有数の展示会への出展、SNSを通じた日々の情報発信など、あらゆる面から石垣島産パイナップルの現状を変える取り組みを行なっています。全ては持続可能な仕組みの構築のために。
パイナップルに限らず、農業の一番の問題は「頑張っても儲からないこと」です。そのため若年層の就業率が低下し、畑は減る一方です。しかし、裏を返せば「ちゃんと儲かる構造を作れば人は戻ってくる」ということ。
当社では加工用パイナップルや規格外の買取や、冷凍保存により通年販売を可能にし、また島内外の市場も開拓し、ブランディングしたことで「ただの青果」ではなく 価値のある商品として売っていきます。これらを一つひとつ達成させていくことで、 農家さんに還元できる価格も変わります。
それでは最後に、Painuが目指す未来をお聞かせください。
僕がやりたいのは、ただパイナップルを売る会社を作ることではありません。目指しているのは、「石垣島のパイナップルが誇りになる未来」です。
・子どもたちが地元のパインを食べて育つ
・若い人が農業を仕事として選ぶ
・海外で“ISHIGAKI PINEAPPLE”が売れる
・農業が夢のある仕事になる
Painuを中心に人・販路・機能を巻き込み、この産業を未来に残していく。それが当社の使命です。
いま、この事業に全身全霊をかける僕には譲れない想いがあります。
「この産業がなくなるくらいなら、自分の人生を全部突っ込んでもいい」。
着実な実績と揺るぎない自信を持って、全国に石垣島産パイナップルを届けていきます。
今後の展開も目が離せません。宮城社長、ありがとうございました。